1.メカニカル・アロイイングによりイットリアを分散して強化したニッケル基超合金Inconel MA754長軸結晶材(二次再結晶により結晶粒を一方向へ伸張させた材料)の高温クリ-プ疲労き裂伝ぱ試験(大気中、900℃および1000℃)を行った。試験片表面においてき裂先端が伝ぱ方向と垂直の粒界に近づくと、伝ぱ速度は著しく減速されて一時的な停留が観測された。すなわち、応力軸方向に伸張された結晶粒界がき裂伝ぱの障害として働いている事が明らかになった。しかし、板厚5mmの試験片でき裂前縁が約10結晶粒(約5mm)にわたると、局所的には結晶粒界によってき裂伝ぱは減速されるものの、全体としては停留等のない滑らかなき裂伝ぱ曲線が得られた。これは、き裂前縁での結晶粒界の効果が平均化された結果である。また、き裂伝ぱ速度は、き裂先端近傍のクリ-プひずみ速度場を代表する巨視破壊力学パラメ-タであるクリ-プJ積分と良い対応関係を示した。 2.二次再結晶を施していないInconel MA754等軸結晶と酸化物を分散していない母材の組成に近いニッケル基超合金Nimonic 75のクリ-プ疲労き裂伝ぱ試験(大気中、前者は800℃、後者は900℃)を行った。き裂はほぼ滑らかに伝ぱし、その伝ぱ速度はクリ-プJ積分と良い対応関係を示した。また、同関係は長軸結晶材のそれと一致し、三者のき裂伝ぱ抵抗に大きな相違がないことが明らかになった。ただし、負荷応力と温度条件は大きく異なり、高温では長軸結晶材の優位が明らかであった。 3.材料微視組織の影響を受けて不規則な挙動を示すクリ-プ疲労微小き裂の発生・成長を確率変数を用いてモデル化した。同モデルに基づいて三次元クリ-プ疲労き裂発生・成長の計算機シミュレ-ションプログラムを開発した。本シミュレ-ション結果は、試験観察によって得られた微小き裂の発生・成長確率の結果と良い一致を示した。
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