研究概要 |
複合材料の力学モデルとして,主として,積層複合薄板を取り上げ,数値シミュレ-ションと実験的検討を行うことを通じて,材料の強度,機能の喪失に結びつく内部構造破損にかかるつぎのような基礎的知見を獲得した. a.ひずみ硬化指数(n値)の異なる材料を複合した材料において,内部にn値の低い材料を配した場合に,界面に力学的不安定を生じ,波長の短い固有変形を伴った分岐変形が予測されることから,界面あれとそこから進展する局所変形(くびれ)が変形限界を決定づけると考えられる. b.材料に速度依存特性がある場合,粘弾・塑性モデルを用いた解析によれば上記のような分岐は生じない.ただし,ひずみ感度指数(m値)がある程度以上小さい場合には(例えば,m≦0.001),初期不整依存性はひずみ速度独立モデル(弾塑性モデル)とあまり変わらない. c.初期ボイドが比較的大きいとき,n値が小さい材料に生じる局所変形に伴う剥離の伝播が重要である. d.剥離の発生,伝播特性には,結晶粒径が大きく関わる.粒径小さいときには前項の現象が重要である. e.結晶粒径がある程度以上大きと,すべり変形を生じやすい結晶方位の粒内の変形がくびれ発生の起点となる. f.二軸引張り下では大きなひずみまで安定した変形が進行する結果,界面に生じる凹凸(あれ)とその成長の結果が引き起こす剥離が変形限界を律する.ただし,母材がきわめて薄い場合,あれの成長の結果,凸部が貫通して穴(ピンホ-ル)を発生し,それが合体して破断を引き起こし,機能の低下につながる不都合を生じる. g.界面のあれは,その大きさが面内塑性ひずみにほぼ比例する初期段階では,第1義的には母材の結晶組織に依存する.あれ面の凹凸は,光学顕微鏡で観察できるスケ-ルの範囲でフラクタル次元がほぼ一定となっている.
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