粉末を原料とする製品において、通常粉末粒子の接合、緻密化のため焼結を行うが、焼結前の粉末成形体に残存する空隙によって、焼結時の製品形状変化および製品の低下等が引き起こされ、問題となっている。もし十分密で(充填率 100%)、強固な粉末成形体が製作できれば、上記問題点の解消が期待できる。金型単純圧縮および圧縮-回転粉末成形装置による粉末圧密の実験から、粉末体の見かけ密度(充填率)は単純圧縮でかなり高い値にはなるが、工具強度の制限から98%以上は困難なこと、および圧縮だけでは強度は向上せず、粉末粒子間にすべりが生じてはじめて強度が向上することが明らかになった。本研究は、さらに高い充填率と強度向上を狙って、常温および無潤滑条件でも加工が可能な摩擦力を利用した後方押出し法によって粉末成形を試みた。 摩擦力を利用した後方押出し法とは次のようにして行う。粉末はカウンタ-ポンチとポンチの間で圧縮され、圧力が高まる。この状態のままコンテナ(内径φ12mm)を出口方向に移動させると、粉末はコンテナとの摩擦力によってポンチとコンテナの隙間から押出される。ポンチ荷重およびポンチ径を種々変更し、以下の結果を得た。 1.工業用純アルミニウムA1050粉末の場合、粉末体が成形可能な最低ポンチ面圧はポンチ直径(押出し比)にかかわらず約300MPaと一定となった。 2.粉末体の強度は1で述べたポンチ荷重以上ではポンチ径にかかわらずほぼ一定となった。ポンチ径φ10mmの場合、引張強さは144MPaと圧延板に匹敵する高い値が得られた。 3.粉末体の充填率は約100%が得られた。 4.粉末体の組織観察および引張破断面のSEM観察から、十分な圧密が行われたことが裏付けられた。
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