本研究は、遷音速流動における衝撃波と境界層の非定常干渉と、流れの三次元性との関係を明らかにすることを企図するものである。初年度に、翼列形状の異なる4種類のタ-ビン翼列について翼列前後の圧力比を変えて衝撃波を発生させ、衝撃波の振動の様子をシュリ-レン法とイメ-ジセンサ-とを併用して測定した。その結果、衝撃波がランダムに大きく変動する圧力比よりも、やや大きい圧力比の領域で、比較的高い特定の周波数のみが卓越する弱い振動が観察された。この振動周波数は翼列形状によって異なり、パラメトリックな調査により周波数を決定する要因が流れの三次元性にあるのでないかと推論された。そこで、本年度はこの推論の是非を調べるため、二次元的形状は相似でアスペクト比ARの異なる3種のタ-ビン翼列について実験を行った。その結果、AR=1.852と1.389では周波数は同一であり、アスペクト比が極端に小さく流れの三次元性が強い場合(AR=0.926)には衝撃波の振動は観察されなかった。これより昨年度の推論は誤まりであり、周波数は二次元的な翼列形状特有のものであることが明らかになった。また、翼列後方の流れを三次元的にトラバ-スし、アスペクト比が二次流れおよび翼列性能に及ぼす影響を調べ、設計点より圧力比の大きい領域では二次流れが強い低アスペクト比の翼列のほうが全圧損失が小さくなるという興味ある結論を得た。 一方、上記の弱い高周波振動が二次元的に決まるという事実を確認するために、非定常流れの計算が可能な新しい遷音速粘性流れのスキ-ムを開発した。すなわち、Pointwise型緩和法を導入して反復計算中に2つのル-プを設けることにより基礎方程式を精度よく満たしつつ陰的に時間進行する有限体積法の提案であり、この方法により翼後縁からのカルマン渦および衝撃波の振動現象の計算が可能になった。
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