本研究は、遷音速流動における衝撃波と境界層の非定常干渉と、流れの三次元性との関係を明らかにすることを企図したもので、動力工学上重要なタ-ビン翼列における流れに焦点を絞って行った。 初年度は、翼列形状の異なる千種類のタ-ビン翼列について翼列前後の圧力比を変えて衝撃波を発生させ、衝撃波の振動の様子をシュリ-レン法とイメ-ジセンサ-とを併用する測定システムにより計測した。その結果、低圧力比の作動状態では振幅が大きく低周波成分の多いランダムな振動があること、設計点よりやや低圧力比の領域で特定の周波数成分が卓越する振幅の小さい振動があることが観察され、これらの要因をパラメトリックな調査により検討した。 次年度は、上記の振動現象と流れの三次元性との関連を調べるために二次元的翼列形状は相似でアスペクト比の異なる3種類のタ-ビン翼列について実験を行い、アスペクト比が二次流れおよび翼列性能に及ぼす影響を明らかにした。卓越周波数成分を有する衝撃波の振動は、極端にアスペクト比が小さくなり三次元性が強くなると現れなくなるが、ある程度アスペクト比が大きくなると、周波数はアスペクト比にはほとんど無関係であり、この振動の要因は二次元的な境界層と衝撃波の干渉によるものであることが推測された。卓越周波数成分を有する振動はタ-ビン翼の励振力になりうるので強度設計上、その予測は重要である。 最終年度は、この振動現象を予測しうる数値シミュレ-ション技術の開発に重点を置いた。すなわち、非定常遷音速粘性流れの数値シミュレ-ションにおいて、計算精度に問題がある従来の近似因子化形の時間進行法に代わり、新たに緩和形陰的風上法による時間進行法を提案し、この方法により、翼後縁からのカルマン渦による振動に加え、流れの不安定性によると見られる卓越周波数成分を持つ振動の存在を確認した。
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