二相気流の境界層構造と特徴を知る為に下記の研究を実施した。 [I]相変化のない微粒子分散気流の境界層構造 静止二相気体中を進行する衝撃波背後の気流の平板境界層について、数値解析を行ない種々の二相流特有の構造を明らかにした。それらに関連して、微粒子数密度の流れ方向変化と断面内分布、および境界層壁面熱流束を計測し、数値解析結果の定性的な妥当性を確認した。主たる成果・知見を以下に示す。 (1)衝撃波通過直後に断面内で均一に分散する粒子のうち、気相境界層に含まれる粒子は、気相の速度勾配によって強い揚力をうけ、壁面から遠ざかる運動をする。この粒子群は境界層外側の直進する粒子と衝突し合体して、気相境界層の外側に数密度の高い粒子層を形成する。その結果、この形態の二相境界層は、壁面近傍の気体剪断層、外側の高濃度粒子層及び中間の迷走粒子層によって構成される。 (2)この構造は、衝撃波を通過する際に発生する気相と粒子間の速度の滑りによって大きく影響され、直径5μ程度以下の微小粒子では、滑り速度が小さく、気体剪断層と高濃度粒子層は実質的に合体する。 (3)白金薄膜による壁面熱伝達量は、壁面近傍の気相のエネルギによって決定する。衝撃波背後では、衝撃波によって加熱圧縮された気相のエネルギによって熱流束が定まるが、高濃度粒子層が発達した段階では気相が粒子相のエネルギを吸収するので、この位置での気体剪断層からの熱流束は増大する。 [II]凝縮を伴う蒸気境界層流れ 過冷却壁面での境界層について、非平衡凝縮滴の発生・成長を考慮した物理モデルによって数値解析を行った。現在、液層の急成長に対応できる差分式を検討中である。蒸気成分の凝縮により、壁面境界層厚が減少し、境界層はく離を遅延する効果が現われる。通常円弧翼についてこれを確認し、さらに検討を進めている。
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