本研究は、チョクラルスキ-法(Czochralski method)による単結晶育成において、るつぼ内に生じている融液の流動および伝熱過程について基本的理解を深めること、特に凝固の際に結晶内に出現する成長縞(ストライエ-ション)の発生機構を伝熱学的に解明することを目的とするものである。前年度に行ったモデル実験(流動・伝熱の可視化)および大型計算機による数値シミュレ-ションの結果、るつぼ内では、浮力による自然対流と回転による強制対流の相互干渉のために、流れと温度場の周期的変動が生じうることが明らかとなった。しかも、このような変動の周期が実際の結晶中の成長縞の周期とほぼ一致することから、成長縞の成因は流れの振動であろうという結論に達した。本年度は、このような融液内の変動流を抑制する手段として有効と考えられる外部磁場の効果について理論的検討を行った。まず近似解析および数値計算によって、導電性流体の自然対流に及ぼす磁場の影響について調べ、ある臨界値以上の磁場を印加すると、液体の流速が急激に減少するようになること、そしてこのような流速の減少の割合は磁場の強さの2乗に比例することを明らかにした。次に、チョクラルスキ-法による実際の単結晶育成プロセスについて、ガリウムひ素(CaAs)の物性値を与えた数値計算を行い、ある程度以上の強さの磁場を印加することにより、融液内の流れの変動を完全に抑制することができることを確認した。
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