流動層熱交換器は高い伝熱性能を有することが知られているが、その伝熱促進機構は未だ十分に解明されていない。特に、伝熱面と粒子の接触による熱交換、流動化気体中の温度境界層の粒子による攪乱、気相流内の乱れ強度の変化といった微細な伝熱機構は全く検討されていないのが現状である。これは従来提唱されてきたモデルが流動化気体と分散粒子とを平均化した連続体と見なし、その中での熱移動を考えてきたためである。そこで本研究では、上記の微細伝熱機構の内の伝熱面粒子間の接触による直接熱交換に着目し、その伝熱に対する寄与割合を求めることによって、流動層熱交換器の伝熱促進微細構造を明らかにすることとした。 まず流動層内の伝熱特性を把握するために、実験用小形流動層内に挿入した単一円管廻りの熱伝熱率を種々の条件の下で測定した。次いで伝熱管と粒子の接触状況の観察を行った。接触状況の観察には光学的手法を用い、各条件における粒子と伝熱面間の接触頻度、接触時間を測定した。これらの結果を比較することによって、以下の知見が得られた。 (1)流動化開始直後の流動層内の円管廻りの熱伝達率は、円管側方で顕著に向上する。このときの粒子伝熱面間の接触時間は、粒子の運動の盛んな円管下半分でほぼ一定であるが、接触頻度は円管側方で特に大きい。 (2)直接接触熱伝動の影響を定量的に調べるために、粒子・伝熱面間の熱抵抗を仮定し、上記の観察結果を用いて粒子接触による伝熱促進効果を解析的に予測した。その結果、流動層の伝熱促進は、粒子接触による熱交換と定量的にも強い相関があることがわかった。 これらの結果は流動層内の伝熱促進効果が、粒子の運動の盛んな領域では、粒子・伝熱面間の接触熱交換に支配されていることを意味するが、これを確認するために、上記の実験の他に、原理的に直接接触拡散効果の無い物質伝達を用いた実験を行い、結果を伝熱実験と比較した。
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