加熱金属および非金属の固体壁面での凝縮過程は蒸気がモノマ-かクラスタ-を含むかによって異なる。そのため、凝縮する蒸気相でのクラスタ-分布を把握しておくことが重要である。本年度は真空容器内に電子ビ-ムを用いた蒸気の発生源を製作し、発生した金属、非金属蒸気のクラスタ-分布を四重極質量分析計を用いて測定し、かつ、固体表面に生成した蒸着薄膜厚さの時間変化を薄膜測定計を用いて測定し、凝縮速度を求めた。実験に使用した金属、非金属はチタン、ジルコニウム、鉄、コバルト、銅、銀、炭素、シリコンである。 その結果以下のことが明らかになった。 (1)加熱金属蒸気中にはかなりのクラスタ-が生成しており、その数密度はモノマ-の数密度と同程度ないしはそれ以上である。 (2)加熱金属蒸着薄膜の厚さは時間と共に直線的に増加し、凝縮速度はほぼ一定である。一方非金属蒸着膜の厚さは時間と共に必ずしも直線的に増加しない。 (3)鉄の蒸着薄膜厚さの時間変化の測定から真空容器内の圧力が低いほど凝縮速度が大きくなる。 本研究結果からはクラスタ-分布と凝縮速度との相関は見いだされなかったが、凝縮現象はクラスタ-によって影響されるためクラスタ-分布と凝縮速度の関係についてより系統的な研究が必要である。
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