凝縮固体表面での気体分子(アルゴン)の凝縮過程を分子動力学法を用いて数値実験を行うとともに、加熱金属(チタン、ジルコニウム、鉄、コバルト、銅、銀)、および非金属(炭素、シリコン)蒸気の固体壁面での凝縮過程に蒸気発生過程でのクラスタ-分布がどのような影響を及ぼすかを調べるために、真空容器内での蒸着膜生成実験を行った。その結果以下のことが明らかになった。 (1)気相と凝縮相との間の相変化面には顕著な構造変化は見られない。しかし、凝縮相内には規則性のある構造が見られ、下方になるにつれて、規則性が増加する。 (2)相変化境界近傍では気相から凝縮相に入ってくる分子のほうが出ていく分子より、より高い並進エネルギ-を持っている。 (3)凝縮、蒸発のエネルギ-流束は相変化境界の内側にピ-クをもっている。 (4)加熱金属蒸気中にはかなりのクラスタ-が生成しており、その数密度はモノマ-の数密度と同程度ないしはそれ以上である (5)加熱金属蒸着薄膜の厚さは時間とともに直線的に増加し、凝縮速度はほぼ一定である。一方非金属蒸着膜の厚さは時間と共に必ずしも直線的に増加しない。 (6)鉄の蒸着薄膜厚さの時間変化の測定から、真空容器内の圧力が低いほど鉄の蒸気の固定壁面での凝縮速度は大きくなる。 本研究結果からはクラスタ-分布と凝縮速度との相関は見いだされなかったが、凝縮現象はクラスタ-によって影響されるためクラスタ-分布と凝縮速度の関係について、今後より系統的な研究が必要である。
|