宇宙基地と科学実験衛星などの間を往復し、実験器材や機器の搬送、取付け、調整などの作業を行なうためのマニピュレータ付き軌道作業衛星の運動は、地上のロボットマニピュレータのそれと基本的に異る点が多く、その制御については未知の部分が多い。本研究はこのロボット衛星の基本モデルとして、1本の多関節マニピュレータをもつ衛星が、近くを浮遊する目標物体を捕捉するケースをとり上げ、その運動をエアスライドテーブルの上でハードウェアモデルによって行なわせ、同時にその時間経過を光学的に追跡して、ソフトウェア的にグラフィックシミュレーションによって検証するという手段を採用した。今年度の研究は、捕捉すべき目標物体がすでにロボット衛星の近傍に存在し、マニピュレータの捕捉動作速度にくらべて目標物体が十分に低速で直線運動している場合の制御問題を系統的に研究した。すなわち、捕捉に際しての手首部の軌道が直線の場合、目標物体を追尾する場合、予測的に最短時間の場合、に分けてその制御則を確立した。また目標物体を捕捉する時のマニピュレータの操作性(可操作度)が衛星本体と目標物体の相対位置(相対姿勢も含む)およびマニピュレータの取付け位置、その機構学的な構造と密接に関係するのでその影響を総合的に判断できる方法を示した。以上の研究を実験的に検証するための、すでに試作されているエアスライドテーブル上の衛星および目標移動物体を用い、これにビデオトラッカーと称する光学追跡装置を用いて、慣性座標系上での制御実験を行なった。またこの実験に対して、グラフィックシミュレーション技法を援用して、理論的な制御予測軌跡と実際に実行した制御軌跡とをオフライン的に比較し、両者の微妙な差異を吟味することによって、今後の研究課題を堀り下げることができ、来年度の研究予定にくり入れることとした。
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