宇宙基地と科学実験衛星などの間を往復し、実験機材や機器の搬送、取付け、調整などの作業を行なうためのマニピュレ-タ付き軌道作業衛星の運動は、地上のロボットマニピュレ-タのそれと基本的に異なる点が多く、その制御については未知の部分が多い。本研究はこのロボット衛星の基本モデルとして、一本の多関節マニピュレ-タをもつ衛星が、近くを浮遊する目標物体を捕捉するケ-スをとり上げ、その運動をエアスライドテ-ブルの上でハ-ドウェアモデルによって行なわせ、同時にその時間経過を光学的に追跡して、ソフトウェア的にグラフィックシミュレ-ションによって検証するという手段を採用した。本年度の研究は、一本のマニピュレ-タを持つ軌道作業衛星がその近傍を浮遊する物体を捕捉する作業の制御問題を中心課題にして、以下のような研究成果を得た。すなわち目標の相対速度レベル、大きさ、形状を定義し、それを捕捉する制御問題に拡張した。移動対象物体の捕捉にあたって、以下の三つの制御法をグラフィックシミュレ-ションを理論的に検討し、その有効性を確かめた。(1)最適軌道および保証作業領域を考慮した目標先端速度設定法によるオンライン分解速度制御。(2)直線軌道および保証作業領域を考慮した目標先端速度設定法によるオンライン分解速度制御。(3)直線軌道および等時刻直線到達領域を考慮した目標先端速度設定法によるオフライン分解速度制御。また上記のアルゴリズムに関して、以下の捕捉動作上の特徴を見出した。(1)の制御法に関しては、捕獲の段階で位置偏差をゼロにでき、ソフトな捕獲が可能である。(2)の制御法は捕獲の対象物の位置偏差をゼロにするだけであり、捕獲合体の際の衝撃は大きい。(3)の制御法は、(2)と同様に捕獲の際の速度偏差をゼロにすることは考慮に入れていないので、捕獲の際の衝撃力は大きい。
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