記録媒体上をサブミクロンの超微小すきまで浮上する浮動ヘッドにおいて問題となっているヘッドクラッシュ現象を解明するため、浮動ヘッドの動的挙動を実測するための実験系を構成するとともに、超微小すきまにおける動作シミュレ-ションを可能とする解析法の研究を行った。 1.実験系の構成:高剛性の静圧空気軸受支持・DDモ-タ付きの精密スピンドル、空気循環方式の内部除塵機構、防振テ-ブルなどにより構成した実験装置において、回転数300-7000rpmにおいて、ヘッド浮上量0.03μmまでの安定浮上を確認した。またHe-Neガスレ-ザ、フォ-カシングユニット、反射光遮蔽光学系などで構成した浮上すきま測定系において、光軸系の高剛性設計、斜め入射光軸系の採用などにより、S/Nを改善し、0.0015-0.015μmの分解能を確保した。本装置の性能はヘッドクラッシュ現象の解明のためのツ-ルとして十分活用できるものである。 2.動作解析法の研究:接触直前の特性を支配する面粗さの影響を解析するために、粗い面をこれと等価な平滑面で置き換える平均すきま理論をスリップ流れの領域に拡張することにより、算術平均と調和平均とを混合した平均すきまで表された修正レイノルズ方程式を導入し、0.1μm領域までの実験によりその妥当性を確認した。また、超微小すきまのように気体の圧縮性が支配的な領域におけるすきまの平均化の方法を明らかにした。さらに、媒体面の粗さを考慮した浮動ヘッドの動特性を求めるため、平均修正レイノルズ方程式に微小振動を仮定した摂動法を応用して、平均すきまで表された動的圧力に関する基礎方程式の汎用的な表示式を導入した。この手法を実用スライダに適用して、wavyモ-ドの強制振動に対する空気膜の剛性・減衰係数を求め、さらに周波数成分ごとの応答を合成することにより、粗さの影響を考慮した浮動ヘッドの過渡応答特性を明らかにした。
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