多指ハンドの協調作業の実現をめざして、次のような階層構造の制御システムを構築した。すなわち、多指ハンドに課す作業を分解し、物体への接近、把持作業のための操作へとつながる一連のザブタスクを決める。制御システムは、ザブタスクに対応する制御指令を力覚情報に基づいて切り換え、生成する最上位レベルと、内部センサと力覚センサのフィードバックに基づく制御を実行する中位レベルと、システム全体を安定に動作させる制御ループの最下位レベルとから成る。本研究の独創性は中位レベルのセンサーフィードバック制御系にあり、これを次のように三つの制御則から構成した。1)把持物体の代表点の絶対位置と、物体形状から決まる各指先の相対位置を一般化座標に選んだ位置制御、2)確実な物体把持を可能にする内力制御、3)外部環境から作用する外力に適応できるためのコンプライアンス制御、これらの制御則により、物体操作とともに、硬い物体を把持する場合に起こり得る相対距離の微小変化に伴う内力の大きな変動に速応する力制御が実現でき、また、組立作業などで起る特定方向の剛性の適応化も可能になる。これらの制御則は、既に開発している力覚センサ付き3関節3本指から成るハンドを対象にし、QS-9トランスピュータ開発システム上に実装している。具体的な作業としてはクランク回し、文字書き作業、挿入作業、ナット締め作業、持ち換え作業などを取り上げた。これらの作業は、作業解折によって予め用意した一連のサブタスクに分解し、力学センサの情報に基づいて自動的に切り換えながら、運動生成とセンサーフィードバック制御を通じて実行され、制御性能が確認された。
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