63年度に得られた成果は次の通りである。 1.本年度購入されたマグネトロン型RFスパッタ装置を用いて、薄膜を作成し、エビタキシャル薄膜の作成法の確立の検討を行った。その結果、RFスパッタ後アニーリングすることによって一部分単結晶化することを見いだし、サファイア単結晶基板上にエピタキシャルさせることの可能性を見いだした。さらに、これまで知られていない配向性薄膜の物理定数をバルク波と弾性表面波の伝搬特性から最小自乗法を用いて決定した。その結果、本薄膜基板の弾性表面波特性を理論的に求めることが可能になった。 2.配向性薄膜の非線形特性を確認するために、エラスティックタイプの弾性表面波コンボルバを作成した。周波数123MHzを用いて実験したところ、コンボルーション効果の起こることを確認した。コンボルバ効率は非線形係数が大きく、一般に弾性表面波コンボルバに用いられているYーZ・LiNbO_3基板の値に比較しても、大きさに遜色はなく非線形材料としても十分使用可能であることが分かった。 今後の課題としては次ぎの2点が上げられる。 3.スパッタ時にエピタキシャル成長させる為の条件(基板方位、基板温度、ガス圧、等)を見つけること。 4.薄膜の強弾性メカニズムの解明については、弾性表面波コンボルバの実験からTa_2O_5薄膜の非線形性の大きさを確認でき、他の結晶に比較しても遜色のない大きさであることが分かったが、また"強弾性"の確認は出来ていない。実験の過程で、配向分極が十分でないことが明らかになったので、その原因を究明することが必要である。
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