ゾル・ゲル法を用いて次の二つの系統の鉄を含む強磁性セラミックスの作成と物性研究を行った。 (1)ホウ素、燐、ケイ素等ガラス形成元素を多量に含む鉄基酸化物、 (2)Bi_2O_3ーFe_2O_3ーABO_3(ただしABO_3:BaTiO_3、PbTiO_3等の強誘電ペロブスカイト)三元系セラミックス、 である。これらのゲルから得た粉体をペレットに形成、焼結してバルクセラミックスおよび適当な粘度のゲルを下地基板上に塗布した薄膜を対象にした。(1)に関しては、硝酸鉄とエチレン・グリコール溶液中にホウ酸あるいは燐酸を種々の原子比で配合し鉄ホウ酸(燐酸)ガラスを作成するこのである。B/Fe=0.25のB添加により、磁比は無添加のものより25%を大きな50emu/gという大きな値のものが250℃以下の低温で合成できることが分った。また飽和磁化4πM_s=1.7KGをもつ透明な薄膜試料が得られた。一方燐の添加は磁化の大きさはホウ素添加に較べ半減するが熱的安定性の優れたものが得られる。これらの成果は1989年度国際磁気会議で発表を予定している。 (2)に関しては、我々が数年前アモルファス状態のスパッタ薄膜で強磁性と強誘電性が共存することを見出したものである。今回、ABO_3に対しBaTiO_3に選び、ゾル・ゲル合成法によってバルク・セラミックスの作成を試みた。原材料として金属バリウムとテトライソプロピルチタネートからバリウム・チタンのアルコキシドを合成し、更に硝酸鉄と硝酸ビスマスの混合液のゲル化反応を利用した。Bi_2O_3ーFe_2O_3ーBaTiO_3三元素でバリウム・フェライト組成からBiFeO_3ーBaTiO_3ペロブスカイト組成まで変化させた試料で、非化学量論組成でアモルファス相が得られることが分った。今後広範な組成で物性を探索する外、ABO_3に対しPbTiO_3の系についても合成を試みると共に誘電特性の測定を行う予定である。
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