前年度実施した基礎的事項に関する検討結果を基に、実波形についての構造解析とその応用面の開拓に関して、研究を進めた。 1.音響振動波・音声波等の実波形をマイクロホンによって把え磁気テ-プ上に収録するとともに、収録波形の一部を切り出してA/D変換を行い、パソコン上で自然観測値系列を導出する実験体制の整備を行った。 2.上記実験装置によって実デ-タの取扱いは可能となったが、理論解析の精度を深めるため、実デ-タを模疑する理論波形の自動発生法について研究し、3つの型の逐次関数波形発生アルゴリズムを確立した。これらを組合わせることにより、かなり広範囲の波形を模疑的に発生することが、可能となった。 3.上力波形に対応して、それから基本観測値系列を算出するプログラムを作成するとともに、これらの基本観測値系列から逆に原波形を合成するプログラムを完成し、任意の波形に対してシミュレ-ション実験を試みた。結果は理論通り再構成可能であることが、確認された。 4.上記の結果を踏まえて、瞬時波形から得られる基本観測値系列から入力波形の周波数分析を厳密に行うためのプログラムの開発を行った。定常波形に譜する周波数分析は、従来フ-リエ解析法が用いられてきたが、同等な結果が上記のプログラムによって、瞬時波形から導出可能であることが、確められた。この結果は、このプログラムがランニングスペクトルの厳密な導出方法を与えるものであることを、示唆していると云える。 5.基本観測値系列は、入力波形の瞬時特徴を表現するものであることが確められたので、これを認識に応用する具体的方法について、研究を進めつつある。
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