アルミニウムの陽極酸化法による光薄膜回路及び光機能素子の研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63460135
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 宮城 光信 東北大学, 工学部, 教授 (90006263)
• 研究分担者: 馬場 一隆 東北大学, 工学部, 助手 (10192709) ; 斉藤 光徳 東北大学, 工学部, 助手 (60205680)
• キーワード: 陽極酸化 / アルミナ / 薄膜 / 光導波路 / 偏光子 / 屈折率 / 複屈折

研究概要

陽極酸化アルミナ膜を用いた光機能素子を実現するため、製作法と特性に関する研究を行い、以下の成果を得た。
1.陽極酸化アルミナ膜の低損失化
光損失の主な要因である残留アルミニウムや膜内の歪を低減するため、陽極酸化アルミナの熱処理を行った。200℃で約1時間熱処理することにより光損失は大きく低減され、最低損失として約3dB/cmを得た。
2.陽極酸化アルミナの厚膜化
大口径光ファイバ光学系への適用を目標として、陽極酸化アルミナの厚膜化について検討した。酸化時の電流密度を最適化することによって、クラックのない良質の膜を最大105μmまで製作することができた。
3.陽極酸化アルミナ膜を用いた偏光素子
金属封入型偏光子に関しては、陽極酸化後の中間処理法を改善することにより、ポア内に安定して金属を封入できるようになった。また、陽極酸化時の電流密度を大きく(最大150mA/cm^2程度)することにより、残留アルミニウムに起因する偏光特性が生じることがわかり、波長1.3μmにおいて消光比20dB以上、挿入損失1dB以下の偏光子を製作することができた。
4.ガラス基板上での光回路形成に関する基礎研究
真空蒸着法で厚さ約10μmのアルミニウム膜をガラス基板上に形成し、これを陽極酸化することによって透明なアルミナ膜を作製できることが分かった。これによって、ガラスやシリコンなどの基板上に陽極酸化膜の導波路を形成することが可能になり、将来、光集積回路などを製作できる展望が開かれた。

研究成果

• [文献書誌] M.Miyagi: "Aluminum anodizing technique for fabricating optical thin-film wavequides:a proposal" Applied Optics. 26. 970-971 (1987)
• [文献書誌] 谷口敏光: "アルミニウム陽極酸化膜の光透過特性" 電子情報通信学会論文誌C. J70-C. 1447-1448 (1987)
• [文献書誌] 谷口敏光: "陽極酸化アルミナ膜の屈折率分布と異方性" 電子情報通信学会論文誌C. J71-C. 1714-1715 (1988)
• [文献書誌] M.Saito: "Micropolarizer made of the anodized alumina film" Applied Physics Letters. 55. 607-609 (1989)
• [文献書誌] M.Saito: "Micropolarizer using anodized alumina with inplanted metalic columns:theoretical analysis" Applied Optics. 28. 3529-3533 (1989)
• [文献書誌] 谷口敏光: "陽極酸化法で製作したアルミナ薄膜の光学的性質" 電子情報通信学会論文誌C-II. J72C-II. 832-836 (1989)
• [文献書誌] M.Saito: "Anisotropic potical loss and birefringence of anodized alumina film" Journal of the Optical Society of America A. 6. 1895-1900 (1989)
• [文献書誌] 斉藤光徳: "アルミニウムアノ-ド酸化皮膜の構造と機能化/光機能素子への応用" 表面技術. 40. 1336-1339 (1989)
• [文献書誌] M.Okano: "Residual aluminum and its dichroism in anodized alumina thin film" Optics Letters. 15. (1990)