ARROW(共振反射型光導波路)は、シリコン等の半導体基板をもとに、コアと基板との間に高屈折率第1クラッド層と低屈折率第2クラッド層の2層一組の干渉反射クラッドを用いて、光をコアへ閉じ込める新構造光導波路である。光集積回路用導波路に適した数多くの特長を有し、さらに干渉反射クラッドが波長選択特性を持つので導波路型分波回路を構成できる。本研究ではこの特長を利用して、半導体基板上に製作した光検出器と集積化したARROW型分波・受光集積素子の実現を目指した。 まず昨年度の本研究では、波長0.78μmと0.88μmの2波長を分波するARROW型分波回路の設計を行い、アイソレ-ション20dBが理論的に可能であることを示した。次に、これらの設計を基にARROW型分波・受光集積素子を試作し、この集積素子の基本的動作を確認した。本年度は引き続いてこの分波受光集積素子の精密な特性測定を行い、波長0.83μmに中心波長をもつ明確な分波特性を確認した。また、ARROWの適用範囲の拡大を目的として、偏波選択特性を除去したARROWーBを開発し、さらに薄膜のパタ-ンニングのみで3次元導波路化を達成できるストライプ横閉じ込め法を開発した。さらに、ARROWのより一層の低損失化を目指して散乱損失の理論的検討を行った結果、製作したARROWの導波損失の実験値と理論値との差は散乱損失であることを明かにし、さらに製作技術の最適化を行って従来の最低記録である0.16dB/cmの低損失を達成した。 今後はさらにARROWの多くの特長を生かして、積層化による高密度光配線など、ARROWのより広範な光集積回路への応用を検討する予定である。
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