本年度は中詰材凍結によるケ-ソン内圧上昇を予測するのに必要な土砂を含んだ海氷の曲げ強度と曲げ弾性率の系統的な実験を行った。海氷に較べて土砂を含んだ海氷は強度、弾性率ともに分散が大きいが、氷温が低下するにつれて強度及び弾性率ともに直線的に大きくなることが明らかとなった。また、すでに得られている精算寒度と氷厚増加の関係と土砂を含んだ海氷の透水係数、それに土砂を含んだ海氷とケ-ソン材料(鋼及びコンクリ-ト)間の凍着強度とスリップ速度、それに今回得られた土砂を含んだ海氷の曲げ弾性率を用いて、ケ-ソン内圧変動のシミュレ-ションを行ない、モデルケ-ソンでの実験結果との比較を行った。その結果ケ-ソン内の平均的な内圧増加については比較的良い一致を示しているが、氷盤とケ-ソン内壁間で起こる断続的スリップ現象に起因する内圧変動までは予測できなかった。これは土砂を含んだ海氷とケ-ソン内壁間の凍着強度の分散が大きいことと、中詰材凍結初期は氷盤のスリップ速度が大きいため、氷盤とケ-ソン内壁の全接触面のうち凍着している面積が10〜50%との間で変化しているためと考えられる。また本年度は、本研究の最終年度であるため、過去2年間に行った土砂を含んだ海氷の透水係数、海氷のみの透水係数、土砂を含んだ海氷とケ-ソン材料間の凍着強度、それに精算寒度と中詰材の凍結厚の関係のまとめを行うとともに、ケ-ソン内圧上昇の予測手法を明確にした。さらに、中圧増加を抑止する方法を4つ提案し、その内の一つであるケ-ソン内壁に上方へ広がるテ-バ-をつけることにより内圧増加を低下させることを実験により実証した。またケ-ソンに付設される防舷材に作用する氷力のみ計算手法も明らかにした。
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