研究概要 |
過去2年間、一質点系モデルを対象として、地震動の破壊力指標として、最大加速度、最大速度、スペクトル強度、二乗和平方根強度、二乗和強度(パワ-)の5種類を選び、建物の復元力特性として、BIーLINEAR,D=TRI,SLIP,原点指向型に対して応答計算を行ない、破壊力指標の性質と応答の特性について検討するとともに、その結果を統計的に処理し分析してきた。これらの成果をもとに、建物の周期、強度(Cy)と応答塑性率、さらに累積応答塑性変形との間にある一定の関係式が存在することを見出し、それの定式化を試みた。その結果、構造物の周期が凡そ0。1秒から1。0秒程度の範囲の建物では、建物強度と地震動破壊力指標と弾塑性最大応答量、累積応答量との間に定量的な関係が存在することを明かにし、それらを具体的な式として提案した。またここで提案した関係式が工学的に見て、かなりの精度で応答量を推定し得ることを実際の応答結果と比較して示した。次ぎに1質点における応答値の推定式を多質点系に拡張する手法について考察し、各階の耐力から決まる降伏変位分布をもとにした推定手法を提案した。さらにその手法による各階の応答推定値を、実際の応答結果と比較し、推定値の精度と限界について種々考察した。それによると、各階の耐力分布が、建築規準法のAi分布から決まる耐力の分布に近い場合には、本手法が極めて精度良く、多質点系の最大応答値を近似出来ることを示すとともに、一般論として展開して行く上での今後の検討課題を整理提言した。
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