Ag-Cd系合金β相の単結晶の作製は非常に難しく、焼入れ温度や電解研磨液の決定など多くの問題を含んでいるが、現時点までに組成の異なる2種類の単結晶試料の作製に成功した。又新しく科研費で購入したX線回析装置に試作した高温用試料ホルダーを取り付け、準安定なβ相が相分離する温度を決定することが出来た。 各々の試料について、室温における散漫散乱強度分布の測定を逆格子空間の3次元的な広い領域について行った。その結果 1.(100)面の〔ITO〕方向に非常に強い散漫散乱が観測された。しかし一般にマルテンサイト変態を行うβ相合金においてしばしば観測される1/3〔ITO〕スポットは観測されなかった。 2.111面上に広がる一様な板状の散漫散乱が観測された。これは以前Ag-Zn系合金において観測されたものと一致し、β相合金の特有の性質であることが明らかになった。 これらの得られた結果について、春の金属学会で報告する予定である。今後はこれらの異常散漫散乱強度の温度依存性について、高エネルギー物理学研究所放射光実験施設のBL-4Cの4軸X線回折装置を用いて測定する予定である。
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