本年度は低合金鋼SCr420粉末を用いて、ホットプレスにおける緻密化方法(加熱、加圧、および粉末の前処理)が、緻密化挙動に及ぼす影響について検討した。研究代表者らは、以前にSCr420に独自の加工熱処理を施し、γ結晶粒を微細化すると、(α+γ)2相域温度で超塑性変形挙動を示すことを明らかにした。同一の材料を用いて本研究ではプラズマ回転電極法により平均粒径236μmの粉末(PREP粉末と呼ぶ)を製造した。また、この粉末を、ボ-ルミリングにより加工することで、予ひずみを加えた粉末(BM粉末)も作製した。ホットプレスの手順はバルク材の加工熱処理上法にもとづき(I)γ化の後2相域の760℃に冷却し、30分加熱後加圧、(II)760℃に加熱後ただちに加圧、の2方法を採用し、それぞれの方法でPREP、BM粉末を圧粉した。(プロセスIP、IB、IIP、IIBとする)。30〜100MPaでのホットプレス中に、コンピュ-タ-を用いて、焼結体の高さの変化を連続測定し、相対密度と緻密化速度を算出し、緻密化挙動を解析した。その結果、プロセスIB、IIB、IIPの高密度域において、粉末の超塑性変形による緻密化が進行していることが明らかになった。またIIの方法では、ホットプレス中にγ相が析出するため、加圧前に(α+γ)2相組織とするIよりも微細な2相混合組織となり、その結果、緻密化が促進されたものと、考えられる。また、このような粉末の組織微細化による緻密化の促進は、ホットプレス前に粉末に予ひずみを加える前処理を施した場合(BM粉末の場合)により顕著になる。以上より、焼結体の緻密化が容易なのは、IIB>IB>IIP>IPの順となり、IPを除き、100MPaでいずれも99%以上の高相対密度の焼結体が、760℃での超塑性変形を引き出すことによって得られた。
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