本研究は、耐熱構造材料として注目されているセラミックス-金属系多相材料について、セラミックス(主に繊維状または粒状の分散相)と金属(マトリックス相)熱膨張係数差に起因する熱応力の効果に着目し、微視力学的な観点から、高温変形および破壊の機構を明らかにしようとしたものである。特に、繰り返し加熱・冷却によって生じるラチェット変形(熱サイクル超塑性)に焦点をあてて、理論的および実験的な研究を行った。 はじめに微視力学解析のための基本ツ-ルとして、“平均場近似"を取り入れた“等価介在物法"によって、粒子間相互作用を考慮した多相系不均質固体の応力・歪解析法を定式化した。その際、個々の分散相は、所定の方向に配向した多数の楕円体粒子のランダム分布集合体として扱われている。このモデルは様々なミクロ組織を有する多相系に適用できる。例として、Sic/Al系の弾性定数および熱膨張係数を数値計算により求め、Sic粒子の形状・配向効果を具体的に示した。また、粒子と、マトリックスの界面が剥離状態にある場合の取り扱いについても検討し、界面剥離に伴う引張ヤング率と圧縮ヤング率の違いを定量的に示した。 上記の微視力学モデルに基づいて、粒子/マトリックス間の“ミスフィット歪"による内部応力の緩和機構を考察し、界面近傍で生じる物質移動(拡散)に支配される多相系の等温クリ-プ構成式を、遷移域および定常域についてそれぞれ導いた。特に定常域ではビンガム流体となり、マトリックスの降伏応力と粒子体積率の積が変形応力の“しきい値"となる。これについては、Al_3Ni/Al系の等温クリ-プ実験による検証した。この結果を踏まえ、さらに加熱・冷却過程を含む熱サイクル条件下での定応力クリ-プ変形を考察し、またSic/Al系について実験を行って、熱サイクル超塑性が現れる条件、変形の負荷応力依存性等を明らかにした。
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