LED発光層は溶液成長法により得られる。溶液成長時の表面の荒れは不純物分布の不均一化をもたらし、LEDの発光効率に影響を与える。ところが、溶液成長後に得られた成長層の表面形態は成長条件により多様であり、詳しくは理解されていない。本研究は、溶液成長過程を直接観察するための光学的手法を確立することと、これにより化合物半導体の成長過程をその場観察し、成長条件と表面形態との関係を明らかにすることを目的としている。 バンドギャップの大きいGaPを用い、0.8μmを中心波長とする近赤外線を観察光とした倒立型光学顕微鏡システムを試作した。赤外線用の撮像管を用い、(1)加熱時のメルトバック過程、(2)除冷法による結晶成長、(3)温度差法による結晶成長過程をビデオ観察した。 結果を要約すると、 (1)メルトバック過程では転位を中心としたピットが形成され、基板面方位が(100)では長方形、(111)では三角形となる。 (2)6°offアングルの基板を用いた除冷法による成長過程では、最初に転位を中心とした小さなヒルロックが形成される。それらのヒルロックは、横方向の成長に比べて垂直方向の成長速度が小さく、次第にテラス状に変化する。そして、それらのテラスが合体して、マクロステップを形成する。この過程は、マクロステップの形成過程として従来定性的に考えられていた。offアングルによる幾何学ステップのバンチングとは異なっており、マクロステップの形成に対する新しい視点を与える。 次年度は、画像を改善することに加えて、ステップの高さを調べるための干渉計、あるいはレーザー走査顕微鏡を組み込むことにより、結晶成長速度の測定を行ない表面形態の変化に対する成長条件の影響を定量化する。
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