研究概要 |
これまでの研究においては,被溶接材が軟鋼板の場合,スポット溶接機の加圧系の固有振動数と交流加熱による溶接部の膨張運動に起因する強制力との共振現象を利用すると電極寿命が格段に延びることがわかり,初年度は固有振動数に影響する上部電極可動部の質量を可変し電極寿命との関係を詳しく調べた。さらに前年度は,加圧系の固有振動数を板ばねを用いて共振振動数に設定することにより電極の長寿命化できることを予備実験において確認した。本年度は前年度の結果をさらに十分定量化するための実験を行った。さらに電極寿命はスポット溶接機の加圧系での共振現象を利用した場合でも電極と被容接板との衝突による衝撃力によっても大きな影響を受けるので、衝撃力に影響する上部電極と被溶接板との衝突速度(上部電極のストロ-クにより変わる),および可動部の質量の電極寿命に与える影響を電極および被溶接板の変形の面からも調べた。そして軟鋼の場合には最適な衝撃力すなわちストロ-クがあること,めっき鋼板の場合にはストロ-クが小さい方が電極寿命が長いことなどを明らかにした。またこれらの結果から機械的特性の一部として,加圧制御が有効と考えられるので,加圧力を2段階に制御することにより,電極寿命の長寿命化について検討した。 電極寿命試験に対するシミュレ-ション試験方法を開発する研究については装置の自動化を行い,実験結果をより正確にすることを試みた。なおこれまでの研究結果を基に「鋼板用スポット溶接電極の寿命評価試験方法」を日本溶接協会規格に対して提案しており,さらにこの規格をISO規格として提案するため今年7月の11W(International Institute of Welding)第III委員会で発表することとなっている。
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