メタクリル酸メチル(MMA)の塊状重合過程で重合率がある点で急激に増加し始める。この現象はゲル効果(Trommsdorff効果)と呼ばれ通例この解明は化学反応式にある拡散係数に最近の溶液論を適用して行われている。又NMRによる研究も行われ、この研究の再検討はゲルの出現と共に界面が現れる事を示唆する。しかし微視的見地からの研究は殆どない。近年X線散乱の測定技術が長足に進歩しこの種の研究が可能となったので、MMAの重合過程を温度ジャンプによる時分割X線散乱測定により研究を試みた。測定は本学工学部高エネルギー超強力X線回折質の機器と本研究費で購入した機器とにより行われた。MMAとベンゼンは常法に従って精製し、重合開始剤としてB.POを用いた。試料調整はSchulyらの文献によった。試料濃度は(1)純MMA、(2)80%MMA(3)40%MMAのベンゼン溶液で外径4.75mm内径4.15mmのNMR管に封入し室温から50℃へジャンプさせたが温度平衡には約100秒を要した。各系ともMoKa線によるX線取乱測定は100秒毎にデータを収集し、3×10^4〜10^5秒まで行った。結果はインバリアントQと相関長1cの時間依存性より解析した。(3)のQは時間と共に直線的に増加し、(1)(2)ではある点から著しく上方にずれる。Qをモノマー相とポリマー相の体積分率の積で割った量はは(3)では一定となり二相モデルの予測と一致するが(1)(2)の系ではこの予測から外れる。この外れは系がゲル点に近づくと急に増加するポリマー相の電子〓〓のゆらぎに由来すると思われる。1cは時間と共に徐々に減じ(1)(2)系ではゲル点で急な減少が起こる。現時点までの測定結果は上記の如く解釈されるが更に高角でのX線散乱の精度測定を行いこの現象の微視的構造を明白にする予定である。以上の結果は信州大学夏季研究会(8月迄草津セナミーハウス)と日本物理学会(10月於広島大学)で口頭により発表した。
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