流域を単位とした総合的な用水管理の手法に関する研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63460212
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 中村 良太 東京大学, 農学部, 助教授 (10011991)
• 研究分担者: 久保 成隆 東京大学, 農学部, 助手 (40134506) ; 後藤 章 東京大学, 農学部, 助手 (80162139)
• キーワード: 知識工学 / 述語論理型言語 / 流出解析 / メッシュタンクモデル / 送水波 / 非定常流解析 / 流域的水管理 / 農業用水の還元

研究概要

近年、流域単位での用水管理は、地域の計画および環境問題の基礎として注目され、そのための新しい取り組みが必要とされた。そのために、この研究においては、まず、基本的な水の動きに関する研究として、次の二つが行われた。
1)河川・用水システム内の還元・循環メカニズムの解明(後藤分担)では、流域の画的な水移動を表すメッシュタンクモデルを完成させ、そのモデルによって農業用水の取水・還元や積雪・融雪などが流況にあたえる影響を幾つかの実際の河川で定量的に評価することができた。流域の面的な水管理に資する基礎的な流域流出モデルが開発されたと言える。
2)河川・用水システムにおける放流水の到達特性の解析(久保分担)では、膨大な河川情報の処理、演算時間節減の工夫などによって実河川の水管理において実用性を発揮しうる非定常流シミュレ-ションモデルを開発し、日常の管理でもっとも問題となる供給の時間おくれを解析可能とした。
次いで、3)用水システム管理アルゴリズムの定式化(中村分担)では、上述の還元機構、放流到達を踏まえつつ、習熟するのには十年を要すると言われている農業用水の操作を知識工学の手法によってプログラム化し、那珂川を例として管理操作者の行動を含めて用水システム全体をシミュレ-トする手法を開発した。これにより、操作判断の一助として得る。
以上によって、実態分析の結果を踏まえての幾つかの具体的な手法が開発された。これらの手法は、今後の実際の管理、とくに異常渇水時の操作判断のサポ-トシステムとして有効に用いられるものと期待される。

研究成果

• [文献書誌] Riota NAKAMURA and Shinichi NISHIMURA: "Simulation of Irrigation Canals for Improvement of Operation ーーa Program with Logics in Decision Process of Operatorsーー" Proc.8th AーA Regional Conference ICID.
• [文献書誌] 西村 真一,中村 良太: "操作の判断論理機構を考慮した農業用水システムのシミュレ-ションーー管理操作の改善余地推定にむけてーー" 農業土木学会論文集.
• [文献書誌] Akira GOTO and Riota NAKAMURA: "Longーterm Runoff Simulation by Meshーtype Watershed Model" Proc.of Seventh Congress APDーIAHR,Beijing. 1. 167-172 (1990)
• [文献書誌] Akira GOTO,Riota Nakamura and Koji KITAMURA: "Analysis of Influences of Irrigation and Drainage on River Flow by a Meshーtype Watershed Model" Proc.of International Conference and Exhibition AIT,Bangkok,Thailand. 3. 787-796 (1990)
• [文献書誌] Jin Soo KIM,Naritaka KUBO and Hiroyasu SHIMURA: "Nonlinear Effect on Water Released Waves in Nonprismatic Channels" Journal of Hydraulic Engineering,ASCE.