研究概要 |
ペプチド薬物の経鼻吸収による適用法を開発する目的で剤形について検討した。まずインタ-フェロンを種々の凍結破壊防止剤と吸収促進剤を用いて粉末剤形にして,生物学的利用能を比較した。グリココ-ル酸ナトリウムが最も吸収促進効果が高かった。粉末剤形調製法として、混合法と凍結乾燥法を用いた。その結果,製剤調製後のインタ-フェロンの力価は混合法の方が凍結乾燥法より力価低下率が低く,凍結乾燥法の約3倍高かったが,生物学的利用能はどちらもほぼ同じ4.4〜4.8%であった。これは混合法による調製は、インタ-フェロンの鼻粘膜上での失活が大きいと推察された。従ってペプチド薬物を粘膜上の蛋白分解酵素より保護し,鼻粘膜への透過率を高めるためにリポソ-ム化を試みた。実験方法としては,リポソ-ム化したインスリンを鼻粘膜とインキュベ-ショし,インスリンの力価を測定し,リポソ-ム化によるインスリンの活性低下を調べた。次にウサギより摘出した鼻粘膜を用いて,インスリン内包リポソ-ムによるインスリンの膜透過実験を行なった。その結果,インスリンをリポソ-ム化しただけでは,膜透過を示さないが,グリココ-ル酸ナトリウムで膜を前処理すると,膜透過がフリ-のインスリンに比べ,著しく促進された。さらにインスリン内包リポソ-ムの膜透過機構を調べるために,鼻粘膜をリポソ-ムとして透過するのか,フリ-のインスリンとして透過するのかを,レシ-バ-側のリン脂質濃度を測定することによって検討した。その結果,レシ-バ-側にはリポソ-ムによるリン脂質は検出されず,リポソ-ムから放出されたフリ-のインスリンが膜透過していることがわかった。ドナ-側のインスリン活性の経時変化により,リポソ-ム化はインスリン活性保持には有効ではなく,吸収促進剤のグリココ-ル酸ナトリウムが有効であった。インスリン膜透過性において,単にリポソ-ム化のみでは効果は不十分であった。
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