研究概要 |
同時真空蒸着法および逐次真空蒸着法で遷移金属複合金膜をつくり、これに低温度の加熱を加えて固体反応を生じさせ、生成する合金相結晶格子を高分解能電子顕微鏡で調べる。二つの研究課題に対して昭和63年度から平成2年度にかけて研究費補助金が認可された。この目標を効率良く達成するために、電子ビ-ム蒸発源を備えた高真空二元蒸着装置の製作に入った。昭和63年度には10^<ー7>Torrの到達真空度をもつ高真空排気装置を組み立てた。平成元年度には、充分大きな容量をもつ電子ビ-ム蒸発源を購入し排気テストを終えた高真空装置へ組み込んだ。平成2年度から、厚いBi膜(厚さ約5000A^^°)とMn膜(約2000A^^°)からなる複合二重膜をこの装置でつくり、低温加熱による接合界面での固体反応生成結晶を調べている。従来使用してきた手造りの二元蒸着装置も併用して、現在までに次のことを明らかにした。成分85〜65at%MnのBi〜Mn同時蒸着膜は蒸着したままでは非晶質の構造をとる。180℃で起こる結晶化で出現する合金相は、a=19.97A^^°、c=4.49A^^°の格子定数をもつ六方晶である。電子線回折図形、高分解能電顕像、およびそのコンピュ-タ-・シミュレ-ションによってその結晶構造解析を逐行した。BiとMnの二重膜接合界面で生成する合相は、強磁性MnBi相、その原子位置のあるものが入れ換ったとみられる規則格子、格子定数a=17.26A^^°,c=10.21A^^°をもつ長周期正方晶、この正方晶と密接な構造的関連を有する12回対称軸をもつ準結晶など、四種以上ある。出版されているBi〜Mn系状態図には、強磁性MuBi相ただ一つが記載されているのみである。 12回対称準結晶の観測は世界に先がけたものであり、このことを速報した。長周期正方晶は遷移金属合金シグマ相と似ており、シグマ相構造を参照しつつその原子配列を構築探求している。溶融亜鉛メッキ鋼板など工業用材料製造へ寄与するため、Fe〜Zn合金系の蒸着実験を開始した。
|