ポリエチレンに関しては、超延伸(高強力-高弾性率)繊維の温度変化にともなう構造及び力学特性を検討した。特にポリエチレンは融点が145℃と低く、かつヤング率の低下も著しかった。そこでその要因を結晶弾性率及び結晶化度の温度依存性との関連において研究した。その結果、結晶弾性率は温度依存性を持たず、ヤング率の低下は結晶化度の低下によることが判明した。またポリプロピレンについても同様な結論がえられたが、ヤング率の温度による低下はポリエチレンほど顕著でなかった。これは温度上昇による結晶化度の低下がポリエチレンほど顕著ではないことに起因する。 次にポリエチレンについて得られた知見をもとにナイロン6のゲルを作成し、乾燥後延伸を行ったが、得られた引っ張り強度並びにヤング率は溶融紡糸(延伸フィルム)試料の値に比べて大きな差はなかった。この原因はナイロン6が結晶構造中に水素結合を保有し、かつ分子鎖長もポリエチレンに比べてずっと短いことに起因することが明らかになった。 セルロ-ス系については、ラミ-繊維のマ-セル化、セルロ-ス誘導体であるハイドロオキシプロピルセルロ-ス(HPC)について高強力-高弾力性率化を試みた。ラミ-繊維をマ-セル化して得られた繊維の結晶構造は、ベンベルグ、レ-ヨン繊維と同じセルロ-スII結晶であるが、得られるヤング率と引っ張り強度は天然ラミ-と大差はなかった。しかし、この繊維を用いて下着を作成するには紡糸という手段が介在してしいるので、極めて高価となるため、工業化への展望にはつながらない。
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