1.日本の電気事業とその技術に関する史資料の整理をコンピュ-タを用いて、(1)基本的な文献検索のデ-タ・ベ-スを作成し、(2)1930年度の『電気事業要覧』を基本にした電力生産に関する諸デ-タの入力を行い、(3)産業用電力消費に関する諸デ-タに加え、一般用電力消費に関する諸デ-タを入力した。特に富山県の運動を契機に全国的に発生した電気争議の関係資料入力に力をいれた。この結果、電力生産と電力消費の地域的格差の問題、電力生産技術体系と産業用・一般用電力消費との関係がモデル化され、今日の電源立地と消費の二極分解的様相の解析に役立てることが可能になった。 2.現地調査ではこれまで未調査であった北海道、九州を重点的におこない、ほぼ全国の調査を終了した。また上述のモデル化のために北陸等の現地調査を随時実施した。 3.研究成果似ついては、(1)電気事業の展開と産業との関係を北海道について具体的に検討しその成果を発表した。(2)産業用電力消費と一般用電力消費の関係について富山県の電気争議を具体的に解析しながら検討を加え、さらに当該時代の電力生産技術体系との連関を追及した。(3)電力の生産と消費のどちらも大規模地域をもたない中国地方を例に電気事業の展開における基本的性格を検討・整理した。(4)電力技術史の方法論を構築する意図から、今日の電力技術と電力政策の問題点について歴史的批判・検討を行い、その成果をまとめた。(5)戦前の電気事業と電気技術の実情を知り得る資料の収集・保存に努力した。 4.今回収集した資料も含め、これまで10年以上に及ぶ研究蓄積の中で集められた資料の解析と総合的検討は今後に残されたが、その成果は他の機会に発表する予定である。
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