ナトリウム冷却高速増殖炉の炉心溶融事故解析の基礎データとして、従来実験の困難さから殆ど研究がなされていない液体金属ナトリウム膜沸沸騰熱伝達機構の解明を試みた。本年度の研究経過は次の通りである。 1)先づ、通常液体に対しても充分解明されていない比較的大きい種々の形状の表面からの、冷却液サブクール度及び表面からの放射伝熱の影響を含む一般的な膜沸騰熱伝達の表示式を、通常液体における広範囲な実験条件下の実験結果を求め、その結果と膜沸騰理論モデルを基礎して導出した。(研究発表、1、2、3) 2)この一般的表示式は、プラントル数の小さい液体金属へ適用しうるものとし、従来2例丈求められている、セシウム及びナトリウム中で行われた非定常膜沸騰熱伝達実験の結果を解析し、放射伝熱の評価において、液体金属の吸収率が、静的状態で予測される約10%程度の値では実験結果が説明出来ず、その値が約100%に及ぶことが予測され、気液界面の乱れに依る放射熱の乱反射に基づくものと結論した。(研究発表、4) 3)前項の解析結果を実験的に検証する目的からナトリウム温度600℃中で、既設の熱伝達測定用水平円柱発熱体を用い膜沸騰熱伝達実験を実施したが、発熱体表面温度が1000℃以上に及び短い時間膜沸騰状態が計測されたが、表面温度測定用熱電対が破損し測定不能となった。 4)この実験結果に基づき、水平円柱ではなく垂直円柱発熱体で膜沸騰を実現させ計測することが有利であるとの結論に達し、新しい2重シースの中に熱電対を設置した垂直円柱試験発熱体を設計し製作した。 5)液体金属に対する垂直円柱膜沸騰熱伝達に関する理論的考察をした。 6)新たに製作した垂円柱発熱体を用い、膜沸騰状態を実現するための計算機制御方式を開発し、予備実験とし自然対流熱伝達データを集積すると共に、方式の有効性を確認し、本格的膜沸騰実験の準備を完了した。
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