膜沸騰熱伝達に関しては、水平円柱上のプ-ル飽和膜沸騰熱伝達表示式がBromley(1950)により初めて提示され、そのご円柱直径の影響を修正した表示式がBreen and Westwater(1962)により与えられた。サブク-ル膜沸騰熱伝達表示式については、上述のBromleyの表示式と、水平円柱表面温度が液の飽和温度と等しいとした自然対流表示式との和で表わされると仮定してSiviour and Ede(1970)により与えられた。この仮定は理論的根據がなく、この表示式は一般的に成立たないことが、本研究代表者等(1986)により明らかにされている。 本研究の目的は、非金属液体と共にプラントル数の著しく小さい高温液体ナトリウムなど液体金属にも適用しうる一般的プ-ル膜沸騰熱伝達表示式の導出を目標としている。研究成果は以下の通りである。 1).層流境界層理論に基づくサブク-ル度と放射伝熱の影響を含む膜沸騰理論モデルの確立と、その数値解及び近似解析解を導した。この解は液体金属に良く適用しうるものである。2).種々の通常液体の実験結果を集積し、その結果を基礎に理論モデルの解析解を僅かに修正した水平円柱に対する一般的表示式を導出した。3).同様の手法で既存の実験デ-タにより垂直平板、水平平板、球などの形状における一般的表示式への拡張を行い、形状への一般化を可能とした。4).この形状に対する一般的表示式を用い、ナトリウム、カリウムなど液体金属における球及び水平平板における既存の実験デ-タを解析し、膜沸騰気液界面における放射吸収率を静的な値約0.16でなく実効的に約1とすると、実験結果を良く記述することを明らかにした。5).現在、この吸収率が、約1に近い値となる原因を解明するために液体ナトリウム中で膜沸騰実験が行われ、その成果は近い将来公表予定である。
|