研究概要 |
糸魚川・静岡線断層系は中部日本で最も活動度の高い活断層である。この断層系の北・中部では水平ずれ(左ずれ)が卓越し、8〜9m/Kyrという極めて大きな変位速度を有することがわかっている(Ikeda&Yonekura,1986)。南部では地形的にみて傾斜ずれが卓越すると予想されるが、定量的な吟味は未だなされていない。 糸魚川・静岡線活断層系南部の変位様式と速度を決定するための基礎試料を得ることを目的として、甲府盆地西縁を横切る一測線に沿って高分解能の重力測定を実施した。測定値の各種補正計算は終了した。この結果得られた重力異常データから以下の知見が得られた。なお、岩石密度測定と地下構造のモデル計算は次年度以降に実施する計画なので、以下の知見は暫定的なものである。 (1)甲府盆地西縁の市野瀬台地には、山麓と台地東縁とに2列の活断層があるが、盆地堆積物と基盤岩との境界は東側の台地東縁断層の位置にあることがわかった。これは、良く似た地形配置を示す中部・東北日本の他の逆断層帯の場合と著しく異なっている。 (2)盆地堆積物は南アルプスの前山の下に水平距離にして数Km以上under-thrustしていることが重力異常のパターンから推定される。この変位量と、盆地堆積物の年代が比較的新しいという2点からみて、この断層の傾斜ずれ速度は極めて大きいものと予想される。
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