研究概要 |
中部・東北日本には多数の逆断層が発達する.従来,逆断層の活動度は,主として垂直ずれの速度のみによって評価されてきた.このような評価法を用いると,中部・東北日本の活断層は,同地域に発達する横ずれ断層に比べて,一桁小さい活動度を示す.しかし,断層面の傾斜が小さい場合,従来の評価法では逆断層の活動度を過小評価する危険性がある.本研究では,断層浅部の地下構造を明らかにすることによって中部・東北日本の逆断層の活動度を再評価することを目的に,以下のような研究を行なった. 1.北上低地帯西縁断層帯の花巻地区においてトレンチ掘削を行なった.その結果,(1)同断層の傾斜は地表下2mにおいて約20度と低角であること,および(2)地表変形からは,さらに深部でより低角になると予想されることの2点がわかった. 2.甲府盆地の西縁と南縁とは逆断層で境される.これらの逆断層帯の浅部地下構造を明らかにするために,南縁および西縁断層帯を横切るそれぞれ一つずつの測線に沿って高分解能の重力測定を実施した.その結果,以下の知見が得られた:(1)盆地西縁の逆断層帯に沿って甲府盆地の堆積物が南アルプスの前山の下へ水平距離にして数km以上underthrustしていることが,重力異常のパタ-ンから堆定される.この総変位量と盆地堆積物が比較的新しいという2点から判断して,西縁断層の活動度は極めて大きいと予想される.盆地堆積物の厚さは,西縁断層帯に向かって厚くなる.(2)盆地南縁の逆断層帯も,重力異常のパタ-ンから見て極めて低角の逆断層である可能性が高い.しかし,盆地堆積物の厚さはこの断層に向かって薄くなる.これは(1)の結果と対照的であり,甲府盆地の沈降が主として西縁断層帯の活動によることを示唆している.
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