研究概要 |
1.高塩濃度溶液処理によって太いフィラメントを両端により部分的に溶解し、フィラメント長(光回析法により見積り、電顕観察により確認)を制御したグリセリン処理骨格筋線維を用いて、発生張力を測定した。これをいくつかの筋節長(2.2、2.5、2.8μm)で検討した結果、いずれの場合も、発生張力は太いフィラメントと細いフィラメントの重なり部分の大きさに比例していた。一方Ca^<2+>イオンに対する感受性は、異なるフィラメント長でほとんど変らなかった。この結果は、筋収縮の"滑り"機構の基礎となっているGordon,Huxley,Julianの実験結果を別の角度から検証したものである。一方収縮速度の方も、フィラメント長が約50%になるまでは変らず、3.0%程度まで短かなっても、最大収縮速度の80%位の速度で収縮した。このことは、収縮装置の特性はフィラメント長に依らず、フィラメント上に並列に組込まれた単位分子機械の収縮特性によって決まっているという右典的描像と矛盾しない。 2.アクチンフィラメント切断タンパク質であるゲルゾリンをウシ血清より精製し、これを用いて細いフィラメントを選択的に除去した筋(原)線維を調整する方法をほぼ確立した。さらに、それに精製アクチン及びトロポミオシンとトロポニンを加えて細いフィラメントの再構成を試みた。その結果、いったん0%まで落ちた張力が30%近くまで回復し、しかもCa^<2+>イオン感受性をとりもどした(ただし、張力発生の協同性は幾分低下した。)調節タンパク節を加えずに精製アクチンのみで細いフィラメントを再構成した場合には、Ca^<2+>イオン濃度に依らず収縮した。 以上、1の結果は、Cタンパク質などのミオシン結合性の微量調節タンパク質は筋線維の収縮特性には関与していないことを示しており、2の結果は、β-アクチニンなどのアクチン結合性の微量調節タンパク質の機能を検討しうる実験系が確立したことを示している。
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