原核生物においてプロモ-タ-領域内のRNAポリメラ-ゼ認識部位である-35、-10配列が明らかにされているが、各プロモ-タ-の強さを決めている分子的機構ならびに生体内での鋳型構造である超らせん形成に伴う強度変化の分子的機構は明らかでない。この研究では、まず、大腸菌ラクト-スプロモ-タ-の野生型ならびに変異型について、それらの試験管内転写活性を超らせん密度0から-0.09の範囲で測定した。その結果、超らせん非導入時には弱いプロモ-タ-ほど、負の超らせん導入に伴う転写活性の増大が顕著なこと、ならびに、弱いプロモ-タ-においては、超らせんの導入に伴って、新しい部位から開始していると思われる転写物が現れることがわかった。さらに、-59部位に(CG)n配列を挿入して、その効果をみると、正規の転写物については効果はみられなかったが、弱いプロモ-タ-において前記の新しい部位からの転写物が超らせん非導入時にも見られることがわかった。このような、転写開始活性に及ぼす超らせんの効果は一体DNAのどのような立体構造変化によってひきおこされているのかを探る第一歩として、DNAのヘリックス軸が立体空間内でどのように曲がっているかを算出するプログラムを用い、10数個のプロモ-タ-の立体構造を推定した。その結果、殆どの場合、-35配列と-10配列との間でDNAがたわんでおり、さらに、その方向は、+1を基点にした場合に、Dickersonの規約で言って、y軸のマイナス方向であることが示された。この知見は、-35と-10領域間に発生したストレスが二重鎮DNAの融解をひきおこすという仮説と関連して興味深く、このたわみの強さやより詳細な方向とプロモ-タ-強度との関係を更に解析する必要がある。なお、この研究は、R.D.wells、西村善文両博士との協同研究である。
|