今年度はドデカイソプロピルトリシクロ〔4.2.0.0^<2.5>〕オクタシランの光物理過程と光分解して生成したシクロジシレンについて研究した。 (1)ドデカイソプロピルトリシクロ〔4.2.0.0^<2.5>〕オクタシランの吸収、発光スペクトルと発光寿命:77K剛性溶媒中での吸収スペクトルは310nmと340nmに肩を示す。(λ_<MAX>=310nm(ε=3400))。310nm励起では430nm及び540nmの2つのピ-クを持つ蛍光が観測された。430nmの発光ピ-クでモニタ-した励起スペクトルは吸収スペクトルと一致せず、長波長の発光ピ-ク(540nm)でモニタ-した励起スペクトルは吸収スペクトルと一致した。この分子の構造から考えて折れ曲がり型とねじれ型の二つの異性体が考えられる。これを裏付けるために、発光スペクトルの温度変化を測定した。77〜140Kの範囲で等発光点が観測され、このことから430nmのピ-クは不純物によるものではなく異性体によるものであり、両者の間で平衡が成り立っているものと考えられた。またこれらの異性体の発光寿命は14nsと5nsであり、その成分比は3:7と決定された。 (2)光分解生成物の吸収、発光、蛍光寿命:ドデカイソプロピルトリシクロ〔4.2.0.0^<2.5>〕オクタシランを光分解して得られた中間体の77K剛性溶媒中での吸収、発光スペクトルを測定した。励起スペクトルに見られる420nmのピ-クは、シクロテトラシラン化合物から生成したジシランのスペクトルとよく対応しており、環状構造を持つジシレン(シクロテトラシラン-1、2-エン)に帰属できると考えた^<3)>。600nmでモニタ-した発光寿命は2成分(5ns及び24ns)であった。この二つの成分は現在の所よくは分からないが、シクロテトラシラン-1、2、-エンの二つの構造異性体に帰属できるものと考えられる。
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