環状ポリシランの光化学及び光物理過程についてレ-ザ-光分解法、時間分割単一光子計数法及び低温剛性溶媒法により研究した。特に光反応において生ずる不安定中間体の動的挙動について検討した。 (1)シクロテトラシランの光分解反応:シクロテトラシランの光分解反応は、その光分解の様式が分子構造に著しく依存することを見出した。平面型のパ-シリルシクロテトラシランは、293Kでは420nmに吸収のピ-クをもち、77KのMPガラス中では415nmに吸収を持つ中間体のジシレンを生ずる。これに対して折れ曲がり構造を持つパ-アルキルシクロテトラシランでは、293Kの光分解反応によりシリレンとシクロトリシランを生ずる。ジイソプロピルシリレン、t-ブチルメチルシリレン及びジメチルシリレンはそれぞれ530、515及び470nmに過渡吸収をもち、寿命は38、50及び380nsであった。これらシクロテトラシランの光分解反応は励起一重項状態から進行することがわかった。 (2)シクロテトラシランの蛍光特性:シクロテトラシランは77K、MPガラス中及びポリエチレンフィルム中において極端に大きなスト-クスシフト(最高13700cm^<-1>)をもつ蛍光を与えることを見出した。これはSi-Si結合が励起一重項状態において伸びるためフランク-コンドン不安定化エネルギ-が大きくなるためとして説明された。 (3)シクロヘキサシランの光分解反応:シクロヘキサシランは室温においてレ-ザ-光分解では470nmに吸収をもつ中間体ジメチルシリレンを生ずる。この一重項ジメチルシリレンは反応性に富みメタノ-ルやトリエチルシランとほぼ拡散律速に近い速度で反応を起こす。77Kにおける光分解反応では453nmに吸収をもつジメチルシリレンを生じ、その蛍光は645nmにピ-クをもち、1.3nsの寿命が観測された。ジメチルシリレンの^1B_1←^1A_1 0-0遷移エネルギ-53.7kcal mol^<-1>が実験から決定された。
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