研究概要 |
気相でのNMR測定は、溶媒効果や分子間相互作用のない「無摂動状態」に関する情報を与える点で重要な新しい測定手段であり、そのデ-タは孤立系を扱う分子軌動法や分子力場法などの理論計算値と直接対比出来る点でも重要である。 本研究は、この気相での高分解能NMR測定法を^1Hに限らず、^<19>F、^<13>C核のNMRへと拡張し、構造化学への応用をはかることにある。 2年間に渉る研究成果をまとめて列挙すると、 1.新らたに^<19>F核に関する気相高分解能NMRの高率的かつ、分解能の極めて高いスペクトルを測定する方法を開拓した。 2.長年の懸案となっていた1,2-ジフロロエタンの配座平衡におけるゴ-シュ効果の解明のための^<19>Fおよび^1H気相高分解能NMRを適用して正確なエンタルピ-、エントロピ-を求めた。トランス配座を基準とした場合のゴ-シュ配座のギブス自由エネルギ-の測定値は-0.81kcal/lとなりMP3/6-311++G^<**>基底を用いたab initio分子軌道法からの値-0.85kcal/molとよい一致を示した。なお電子状態に関する計算結果から、ゴ-シュ効果の要として、H-F間の1、4-相互作用が重要であることがわかった。 3.メタノ-ル、ジメチルエ-テルをテストサンプルとして10mm標準試験管に詰めて、270MH_2分光器により、良好な^<13>Cスペクトルを得ることが出来た。測定方法をさらに改良して、効率よく測定することが出来るようになれば、一般の有機化合物の無摂動状態の構造化学において重要な測定手段となり得る。
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