研究課題/領域番号 |
63470008
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岡田 勲 東京工業大学, 総合理工学研究科, 教授 (60011582)
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研究分担者 |
巾崎 潤子 東京工業大学, 総合理工学研究科, 教務技官 (10133331)
岡崎 進 東京工業大学, 総合理工学研究科, 助手 (70194339)
小田原 修 東京工業大学, 総合理工学研究科, 助教授 (90185611)
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キーワード | 溶融塩 / 水酸化物 / 液体構造 / 中性子散乱 / ラマン散乱 / 分子動力学シミュレ-ション / 回転緩和 / 振動緩和 |
研究概要 |
1.これまでに購入した設備備品類は、すでに実験に用いられ順調に稼動している。 2.前年度までに試作、開発してきた、ニッケル金属を耐食材料として採用した測定セルを用いて、溶融水酸化リチウムに対し、これまでの測定に加えさらに充分な統計量を有する中性子散乱測定を行った。この結果と、分子動力学計算とを相補的に用いることにより、溶融水酸化リチウムに対し、以下のような詳細構造を明らかにした。 (1)リチウムイオンは水酸化物イオンの酸素側、OH軸と115°の方向に、酸素原子から1.95Aの位置に最も大きな存在確率を示す。これは、真空中におけるリチウムイオンの配位位置と相当異なり、集団系としての特徴を反映したものである。 (2)リチウムイオンは酸素側に配位すると同時に、ある程度水素側にも配位している。結晶においては水素側には存在せず、これは液体の乱れた構造としての特徴である。 (3)水酸化物イオンはリチウムイオンのまわりに正四面体配位を、またリチウムイオンは水酸化物イオンの酸素原子側直下に多少折れ曲がった平面四配位構造を、その骨格構造としている。 これらを通して、強い相互作用を有するク-ロン液体の特徴を、詳細かつ正確に把握することに成功した。 3.ラマン分光においても、前年度までに開発したセル等を用いて、一連の溶融アルカリ水酸化物に対する測定を実施した。この結果、振動緩和速度は対陽イオンに大きな依存性を有するが、回転緩和速度はそれほど依存しないことが示された。さらに、回転緩和には、librationに基づく小さな時間での速い振動的な緩和過程と、液体の構造緩和を伴う回転に基づく、大きな時間での比較的遅い緩和過程の二種類の過程が存在することが示された。
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