研究概要 |
酒石酸より誘導されるキラルな1,4-ジオ-ルを導入したチタン化合物を不斉触媒として用いることにより、不斉Diels-Alder反応、不斉分子内Diels-Alder反応が、高いエナンチオ選択性で進行することが明らかになった。また、本触媒はアクリル酸誘導体とケテンジチオアセタ-ル、ビニルスルフィド、アルキニルチオエ-テルとの〔2+2〕環化付加反応を促進し、対応するシクロブタン、シクロブテンがほぼ光学的に純粋に得られる。ここで得られるシクロブタンより、強い抗ウィルス活性をもつ、オキセタノシンの炭素同族体を不斉合成することができた。 キラルなチタン化合物は、フェニル酢酸誘導体のラセミ体の不斉エステル化にも有効である。触媒量のキラルなチタンを利用するだけで、光学分割を効率的に行うことができる。さらにラセミエポキシドの光学分割にも応用できることが分った。 上述した反応の開発と同時に、キラルなチタン化合物の溶液中での状態について検討を行い、触媒反応の選択性にチタンの会合状態が大きな影響をもつことを明らかにした。また分子内不斉エン反応において、ジェミナルジ置換基効果が配座異性体の存在比に起因することを、分子力場計算を行い示した。 不斉エン反応、〔2+2〕環化付加反応の生成物を利用し、ε-カジネングランジソ-ルを光学的に純粋に不斉合成した。また、分子内Diels-Alder生成物より、トランスデカリンを簡便に不斉合成し、これをコンパクチンを基本骨格に誘導することができた。
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