1)カブスライスを実験材料として用いて、ファイトアレキシン(PA)およびカラシ油配糖体に及ぼす紫外線照射の影響をHPLC分析により経時的に調べた。紫外線照射により脂肪族カラシ油配糖体の含量が急減したのに対し、インド-ル系カラシ油配糖体含量は急増した。またPAの産生が認められた。一方、非照射のスライスにおいては、カラシ油配糖体に関して同様の傾向がみられたが、PAの産生は認められなかった。PAの産生蓄積には、付傷ストレス以外の要素がさらに必要である。 2)α位を^<13>Cでラベルしたトリプトファンを紫外線を照射したカブに投与したところ、スピロブラシニンのイミノ炭素に^<13>C標識が取り込まれた。このことはブラシニンの孤立したチオカルボニル炭素が標識されたことを意味し、トリプトファンからブラシニンへ至る生合成過程において分子内転位反応が起こっていることを示している。 3)同位体で標識したトリプトファンおよびメチオニンの投与実験から、ブラシニンのインド-ル環はトリプトファンに、メチルチオ基はメチオニンにそれぞれ由来することが判明した。 4)同位体で標識したブラシニンの投与実験から、ブラシニンはシクロブラシニンおよびスピロブラシニンの前駆体であり、スピロブラシニンはシクロブラシニン、ジオキイブラシニンを経由せずに、ブラシニンから直接生合成されることが明かとなった。 5)紫外線を照射したカブに、モデル基質としてベンジルイソチオシアナ-ト投与したところ、ブラシニン側鎖を有する化合物が単離された。 6)アブラナ科植物では、インド-ル系カラシ油配糖体の生合成経路の全部あるいは一部を利用してインド-ル系イソチオシアナ-トが重要中間体として生成し、さらに独自の生合成経路が誘導されることにより、アブラナ科PAの生成に至るという生合成経路を提出する。
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