有機合成の手法による新しい甘味配糖体の開発

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63470024
• 研究機関: 徳島文理大学
• 研究代表者: 西沢 麦夫 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (40137188)
• 研究分担者: 山田 英俊 徳島文理大学, 薬学部, 助手 (90200732)
• キーワード: 甘味化合物 / 配糖体 / グリコシル化反応 / 立体化学制御

研究概要

甘味配糖体の合成戦略には二つの重大要素である。アグリコンの炭素骨格合成法の確立、および効率的グリコシル化反応の開発である。当該年度、本研究者は後者の問題点を重点的に研究し、新しい、非常に簡便かつ経済的なグルコシル化ー熱グリコシル化反応ーを確立した。従来のグリコシル化反応は多量の銀もしくは水銀塩を必要とし、いわゆるけっして工業的プロセスに成り得ない反応であったのに対し、本研究者らが今回開発した方法は、一切の金属を必要としない点で画期的である。たとえばコレステロ-ルに対しての1.2当量のベンジル基で保護した塩化グリコシルの熱反応は、溶媒すら用いる事なく、120℃に2時間加熱するだけで、92%の収率でグリコシドを与えた。グリコ-スのみならず、キシロ-ス、ラムノ-ス、マンノ-ス等の糖を用いても反応はスム-ズに進行し、アルフ-ルの種類を様々に変化させて、本法を一般的に有効な手法として確立することができた。特に、マンノ-スやラムス-ムのように、2位のアキシャル置換基を有する糖に対しては、反応の立体選択性は非常に高く、αグリコシドを高選択的ないしは特異的に生成することを見出した。
次にアグリコン部分の合成は、甘味配糖体オスラジンの有するステロイド環の形成及び側鎖上の置換基の立体化学制御の問題を検討し、すべての問題点を解決することができた。
超甘味配糖体オスラジンとその類縁体合成の為に必要な条件は整備され、いよいよ甘味物質の全合成を進める時に至った。

研究成果

• [文献書誌] 西沢麦夫,菅由紀子,山田英俊: "Thermal Glycosidation with Benzylated Glycosyl Chlorides:A Very Simple Procedure of Glycosielation" Chemical Pharmaceutical Bulletan. 37. 565-567 (1989)
• [文献書誌] 竹中秀行,佐藤友宏,西沢麦夫: "Chiral Induction in a Biomimetic Olefin Cyclization." Tetrahedron Letters. 30. 2267-2268 (1989)
• [文献書誌] 西沢麦夫,江村誠,山田英俊,城始勇,カイル-,林雄二,徳田春邦: "Isolation of a New Cycloartenoid Triterpene from Leaves of Lansium domesticum:Novel Sikn Tumor Promotion Inhibitors." Tetrahedron Letters. 30. 5615-5618 (1989)
• [文献書誌] 宮本積,浜中信行,寺島宏,西沢麦夫,大野博之: "Lansium domesticum Jack V.Duku果実の乾燥皮中の5αーReductase阻害剤とその育毛剤としての可能性" 現代医療. 21. 1625-1630 (1989)
• [文献書誌] 西沢麦夫,菅由紀子,下元和香,山田英俊: "αーSelective Thermal Glycosidation of Rhamnosyl Chlorides" Tetrahedron Letters. 31. (1990)
• [文献書誌] 西沢麦夫,野依良治(Ed.B.M.Trost,I.Fleming): "“Comprehensive Organic Synthesis"Vol.8.Part I." Pergamun Press,Oxford,England,