研究概要 |
有機化合物の電極反応過程において生成する短寿命ラジカル種の新しい構造解析法として、フロー電解・共鳴ラマン分光法の開発とその基礎検討を行い以下の成果を挙げた。1.カラム電極を用いた定電流フロー電解法の開発:非常に大きな電極表面積を有するカラム電極を用いる定電流パルス電解法により、流液中の復極剤を高速、かつ高効率で電解して有機ラジカルイオンを定量的に発生させることができた。2.電解フロー法を用いた共鳴ラマン分光法:この方法の利点は、電解生成イオンラジカルを均一溶液系として、励起光による分解なく測定できることの他、均一溶液のラマン測定において重要となる濃度制御を、電流量と流速の制御によって容易に行えること、また電解条件を変えることによって、カチオンラジカルとダイカチオンのような電荷の異なった活性種を選択的に生成できることなどである。3.連続光源レーザ光源によるチアントレンカチオンラジカルの共鳴ラマンスペクトルの測定:本法によりアセトニトリル中での電解生成チアントレンカチオンラジカルの共鳴ラマンスペクトルの測定に成功し、その構造解析を行った。4.芳香族アミン酸化溶液の共鳴ラマンスペクトルの測定:NーメチルーNーフェニルアニリン(MPA)のアセトニトリル溶液を電解酸化した場合、そのカチオンラジカルは不安定であるために速やかに2量化し、N,N′ージメチルーN,N′ージフェニルベンジジン(MPB)を生成する。さらにMPB^+・カチオンラジカルやダイカチオンMPB^<2+>を生成する。この場合MPB^+・を488.0nmで、またMPB^<2+>を514.5nmのアルゴンレーザで励起することにより、それぞれの共鳴ラマンスペクトルを別々に測定することができ、解析の結果、MPB^<2+>ではCーC間の2重結合性が増加していることが判った。5.現在、時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定やクリプトンレーザ光励起による示差測定法について検討を行っており、今後さらに短寿命種への応用へと発展させる。
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