研究概要 |
選択的錯生成反応を行うリガンドの分子設計には、第一に立体的な規制の高いリガンドを見い出すことが必要であり、第二にこれらの有機リガンドの骨格の末端基に修飾を施し、どのような機能を賦与するかにある。本年度はrigidなリガンドであるポリピラゾリルボレ-ト塩を各種合成し、これらの金属キレ-トの熱的性質および抽出挙動を前年度に引き続き検討した。他方アシルピラゾロン、α-アシル-d-カンファ-、ジフォスフィンオキシド類など、O,O-配位のリガンドの末端基をかえ、抽出機能に及ぼす影響を検討した。1.ポリピラゾリルボレ-トリガンドはホウ素にピラゾ-ル環の1位のN原子が2〜4ケ結合したN,N型リガンドで中間の硬さをもつ塩基であり、遷移金属イオンとはボ-ト型配位構造をもつ極めて安定で特異的な錯体を生成する。しかし硬い酸の金属であるアルカリ土類などは普通N,N-配位のリガンドとはクロロフィルなどを除き安定な錯体を生成しないが、ハイドロトリスピラゾリルボレ-トなどのリガンドではとくにMg^<2+>と安定な錯体を生成した。すなわち、常圧で分解されることなく昇華し、酸定数よりかなり低いph値で抽出された。その他数種のリガンドの金属錯体の抽出機構、熱的安定性について研究を進めた。2.アシルピラゾロンの4位などに置換基を導入し、主として希土類元素との錯生成反応に与える立体的効果を抽出法により検討を加えた。その結果、4-位のベンゼン基のオルト位にFが2ケ置換したリガンドは3位のメチル基との立体効果によるひずみが大きく、最も大きな立体効果を与えた。またポリフォスフィンオキシドを中性ルイス塩基として用い、アシルピラゾロンとの協同効果についても検討を加えた。その他有機ゲルマニウム種とハロゲン化イオンとの錯生成反応について、抽出法により研究を進め、水溶液相におけるこれらの反応の生成定数などを求め、θ結合の錯生成に及ぼす影響について考察した。
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