(1)火山岩斑晶中のガラス包有物はその火山岩を噴出したマグマの急冷凍結物と見なすことができる。したがってマグマ中の揮発性物質濃度および組成はガラス包有物の分析から得ることができる。本研究では100μm程度の大きさのガラス包有物を真空中でレ-ザ-ビ-ムの照射により溶融し、その中に含まれるH20およびCO_2を抽出・分析するためのシステムを作成した。 (2)レ-ザ-には最小ビ-ム径10μm、エネルギ-7WのNd-YAGレ-ザ-を使用した。放出されたガスを一たん液体空気トラップに捕捉した後、寒剤を用いてCO_2をH_2Oから分離し、静作動四重極質分析計で定量した。抽出・分析装置内への吸着を避けるためにH_2Oは加熱した金属ウランとの反応でH_2に還元した後に分析した。このシステムを用いることによりH_2Oについては0.04-99ngおよびCO_2については0.01-18ngの範囲で直接的な検量線が得られた。 (3)レ-ザ-ビ-ム照射により溶融したガラス質量は、顕微鏡下で測定された溶融孔の大きさ(体積)にガラス密度を乗ずることにより見積った。ガラス包有物中の揮発性物質濃度は定量されたガスの絶対量を溶融ガラス質量で割ることによって求められる。 (4)このシステムの信頼性を評価するためにH_2OおよびCO_2濃度が既知のマリアナ背孤海盆玄武岩(H_2O=1.37wt%およびCO_2=326ppm)を分析したところ、H_2O=1.4±0.2wt%およびCO_2=390±40ppmの濃度を得た。また、本システムでは上記組成のガラスの場合、直径約150μmガラス包有物中の揮発性物質濃度を定量することが可能であることが分かった。定量限界を下げるためにはバックグラウンドの寄与を引き下げることが重要である。
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