研究概要 |
前年度の研究に引き続き、本年度は以下のような研究を行った。 1.糖質変換反応、および糖質の分子識別機能を有する金属錯体の探索を行った。その結果、Nー置換ジアミンとの組み合わせではNi^<2+>イオンの他にCo^<2+>イオンならびにCa^<2+>が有効であることが判明した。特にCa^<2+>イオンの場合は簡単なモノアミンでもC2エピメリ化が進行する。 2.上記の研究で見い出したCo^<2+>およびCa^<2+>の系における糖質変換反応を同位体標識したアルド-ス(D-Glc,D-Man)ならびに重水素化溶媒を用いて、NMRスペクトルにより検討した。その結果、いずれの場合も、Ni^<2+>の場合と同様に立体特異的な炭素骨格の転移を伴う珍しいC2エピメリ化であることが明らかとなった。また、Ca^<2+>の系ではエピメリ化と共にケト-スへの異性化が進行する。この場合は炭素骨格の転移は起こらないが、通常の塩基によるエンージオ-ル転移とともに分子内水素移行という、大変珍しい二種類の異性化の経路があることを見いだした。 3.グリシンの前駆体であるαーアミノマロン酸と、エチレンジアミンを配位子とするCo(III)錯体との反応を、反応条件を変えて詳細に検討した。反応機構についてはESRスペクトルを、また生成物については電子吸収、NMRスペクトル、およびX線結晶構造解析により検討した。その結果、反応雰囲気および溶媒の選択により、α-アミノマロン酸は酸化的脱炭酸反応によるグリシナト錯体、配位ジアミンのN原子との結合によるα-ジアミン型錯体、あるいはカルビノ-ルアミン型錯体の生成経路の制御が可能であることが判明した。 4.先に見いだしたNi^<2+>ーNー置換ジアミンの系による、アルド-スのC2エピメリ化反応を、二糖類のアルド-ス末端の変換に応用した。その結果、(1ー6)結合の二糖のみが変換されることが、明らかとなった。さらに、新規に合成された糖の構造を二次元NMRによって解明した。
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