前年度に引き続き、3d遷移金属とアンチモンの多層膜を作製し、3d遷移金属アンチモン化物単原子層の生成条件と磁性を検討した。主に、MnSb単原子層のX線回折プロファイルを磁化曲線の解析、Sb/Ni/Sb三層膜のFMR実験、Fe/Sb・Co/Sb多層膜の作製を行った。 1.MnSb単原子層を含む多層膜のX線回折プロファイルの解析を行った結果、繊維配向構造にともなう結晶子の配向分布の効果とMnSb層の膜厚分布の効果とを取り入れたステップモデルによって、実測のプロファイルを再現することが出来た。また、種々の磁場中で磁化の温度変化を測定した結果、MnSb単原子層の2次元長距離強磁性秩序状態は80K以下で存在し、20K以下では磁区構造が形成されていることが判明した。 2.Ni/Sb界面の反応性の高さについてはすでに前年度に明らかにされていた。どの程度の反応性の高さであるのかを検討するために、Ni蒸着膜厚が100〜1000ÅのSb/Ni/Sbサンドイッチ膜を作製し、X線回折・磁化・FMRの測定を行った。Ni層が厚い場合には、fcc-Niの膜厚に換算して約20Å分が反応していることが判明した。また、未反応のNiは〔210〕配向し、結晶磁気異方性は膜面に垂直方向が容易軸であることも判明した。 3.Co/Sb・Fe/Sb界面は、基板温度を100℃としても反応性が低いため、エピタキシャル成長したCoSb・FeSb単原子層は生成されないことが判明した。 4.以上の結果を含めて、3d/Sb界面の反応性と3d遷移金属アンチモン化物単原子層の構造・磁性について総合的な検討を行なった。
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